『無水掘工法』

(ロックアンカー工・ロックボルト工における削孔システム)

JOSシステム研究会

無水掘工法普及推進室

代表 永見 博希

山本 裕三

 

○表紙

これよりロックアンカー工・ロックボルト工における削孔システム「無水掘工法」について発表いたします。

 

○無水掘工法とは

無水掘工法とは削孔水を使わず、

圧密削孔により孔壁の保持を行うことにより            

ノーケーシング、

超軽量電動削孔機での削孔可能とした工法です。

圧密削孔とは超高圧エアーによる削孔で

面圧

周速

トルクの相乗効果を理論的かつ実証的に確立した削孔システムです。

 

     従来工法削孔水注入

従来工法では、毎分180リットル程度の削孔水を地山に注入するため、すべり面等の地盤境界に水が大量に供給され、二次災害つまり自ら崩壊を導く事がありました。本工法においては、削孔水が不必要なためこの危険がなくなりました。

 

     排水ボーリング

本工法では、地下水の有無・被圧の程度が分かるため、即対策が可能です。被圧地下水は定着部のグラウトを希釈させ品質低下をまねき、抜ける要因の1つになります。

主に、排水ボーリングによって被圧を下げてからセメントミルクの注入を行います。

 

     足場組立・機械セット状況

これは、足場の組立状況・機械セット状況です。機械の小型化・軽量化により、このように足場幅が1.6mで済むようになりました。

 

 

 

     足場写真

この写真は従来工法と無水掘工法の足場の比較ですが、

従来工法の4.5m足場はジャングルジムのようにそびえ立っていますが

無水掘工法の1.6m足場は見えないくらいのものとなっていて、足場空立米は従来の1/5以下となります。

 

     ワンマン遠隔操作

削孔機の軽量化および電動化により、ワンマン遠隔操作を実現し、機械軽量化により、ロットの継ぎ足し等を1人で行う事が可能なため、合図ミス等による事故が無くなりました。また、削孔を遠隔操作にて行えるため、万が一崩壊等があった時でも作業者の安全は確保出来るようにいたしました。

 

     無水掘工法パイロット事業実績・予定

ここで無水掘工法のパイロット事業の実績と予定について発表します。実績と致しましては、福井と和歌山と山口で施工が完了しています。この中で、今年の近畿建設技術展で開催されました技術討論会にて、和歌山河川国道事務所・海南国道維持出張所の大野所長が発表された、42号河瀬地区擁壁補強工事について施工者の立場からご説明したいと思います。

 

     工事概要

まず工事概要ですが、

工事名:42号河瀬(鹿ヶ瀬)地区擁壁補強工事  

工期 :平成16年2月21日〜6月14日

工事場所:和歌山県有田郡広川町河瀬地先

工事の目的:道路下の旧擁壁を補強する為

工事内容:アンカー工 削孔径 Φ90mm アンカー長9.0m〜12.0m 本数33本 合計365.0

です。 

この標準断面図のように 受圧板とアンカーで旧擁壁を押えつけ 補強しました。

 

     着工前写真

着工前の写真です。

 

     施工写真

そこに1.6m幅の足場を組み機械をセットし削孔している状況です。このような小型の削孔機を用いる為に仮設足場は小さい物ですみました。

 

     削孔時設置地盤確認状況

これは、現場で削孔時に排出されたスライムを採取した写真です。自由長部の土砂の部分は1.0m毎にスライムを採取し、定着長部の岩の部分では0.5m毎に採取しました。

無水で圧密削孔する為にパウダーコアを採取する事が出来、現場で1本ごとに設置地盤の位置を確認して、1本1本削孔長を決定します。したがって、アンカーテンドンも削孔長を決定してから現場加工致します。従来工法では、現在アンカー材の75%は工場加工であると聞いています。それなのに何故このような事をするかといいますと

 

     グランドアンカー設計・施工基準、同解説

平成12年3月には10年ぶりに大改定された地盤工学会の「グランドアンカー設計・施工基準、同解説」の第7章 施工、削孔の項で『設計仕様・地盤条件・施工条件・施工規模などを考慮して削孔機械と削孔システムを選定し、アンカーの品質が十分に満足できるものとなるように管理を行いながら施工する。』と明記され、また『削孔中に排出されるスライムの状況や削孔速度などにより、アンカー体の設置地盤の位置や層厚を把握し、設置地盤としての妥当性確認(の参考とする。』と明記されているように、

現場施工時に11本の設置地盤の確認が義務付けられたのです。したがって、必然的にアンカー材も現場加工にしなければいけないのです。

唯一それが可能な【無水掘工法】は開発以来実施しています。現在390現場、140,000mの実績が示すように数多くの現場で採用されており、結果この新工法が十分評価されたと考えています。

 

     削孔時設置地盤(定着層)確認状況

これは施工報告書から抜粋した削孔時設置地盤確認柱状図です。採取したスライムの写真を撮り、それを貼り付けることによって、報告書で全本数の土質状況が確認できます。

この3本のアンカーの削孔長は設置地盤の確認の後、設計の10.8mに対して

11.8m、12.8mと変更となりました。

 

     竣工後写真

これは、竣工後の写真です。このように受圧板を設置し擁壁を補強しました。

 

     活用の効果1

無水掘工法によって11本設置地盤の確認をすることによって、全33本中23本でアンカー長が変更となりました。内訳としましては20本で1.0m〜1.5m長くなりまして、3本で0.5m〜1.0m短くなりました。

結果としてアンカー長が長くなることでより確実に設置地盤に定着され、短くなることで無駄のない施工が出来たといえます。

 

     活用の効果2

また、従来工法は足場幅4.5mであるため足場の数量が710空mとなりますが

無水掘工法の足場幅は1.6mであるために、足場が230空m

この現場では約1/3となりました。

それによって仮設足場数量の減少による工事コストの縮減が計られ

また、足場幅が4.5mから1.6mに狭くなることによって、民間境界を越えることなく足場を設置することが出来ました。

 

     問題点

この現場では旧擁壁の裏込めの奥に厚い崖錐堆積物が存在しました。

その層が自立しない孔が8本ありました。

その場合には一度削孔した後にセメントミルクを注入し、固まった後に再度削孔するセメンテーション方式をとりました。

本現場の土質はかなり悪くセメンテーション方式でも孔壁が自立しない孔が5本あり

その孔はケーシングを使用しニ重管無水掘工法にて完成させました。

その手順で施工したため施工に時間がかかりましたが

従来、設計時検討段階で圧密削孔による孔壁保持が難しいと判断した場合は、二重管無水掘工法で計画しますが、

本現場ではパイロット事業ということで、先ほどの手順をとることによってこの土質としてのデータをまとめました。

 

     まとめ

最後にまとめと致しまして、アンカー工は補強工事ですので、何らかの問題があるから施工されるわけです。そのような現場に削孔水を使用することは地山を傷めるだけでなく、施工時の危険性が非常に高くなります。

無水掘工法は水を使用しないために、地山を傷めずに安全です。

品質・安全面においては無水掘工法が最適です。

無水掘工法はどのような土質でも対応できますが

土質によってはコスト・工期が左右されます。

したがって、設計検討時に、発注者・設計者・開発者が三位一体となって検討することによって、より確実に品質の確保やコストの縮減が計れると思われます。 

近畿技術展の技術討論会で発表していただいた大野所長も、設計検討時の開発者を交えての検討の重要性を訴えておられました。

 

     無水掘工法パイロット事業実績・予定

その後に発注になりました、福井河川国道事務所発注の敦賀BP坂下地区法面工事では発注前に、ボーリング柱状図等の資料を開発者に見せて検討の後発注となりました。その現場も先月で施工を無事終えております。その現場について発表したいと思います。

 

     工事概要

工事概要と致しまして、削孔径は90mm・アンカー長は7.0m〜14.0mです。本数は65本で総m数は603.0mです。

ご覧の横断図の様に切土斜面にアンカー工を施工するものです。

ただし、この横断図に書いてありますように、今回パイロットとして発注されたアンカー工事は、増し打ちアンカーとして発注されました。

 

     施工状況

これは施工状況の写真です。この現場は、逆巻きで受圧板アンカーを従来工法で施工していき、最下段まで切り土をしたところ、法面の一部が崩壊してしまいました。そこで、追加で受圧板の間を法枠で補強しました。

その法枠の交点にアンカーを施工する部分がパイロット事業として追加発注されました。やはり、切土法面は思いもよらない挙動を示す事が多く、その切土法面に削孔水を注入するのは非常に危険であると考えられます。

 

     無水掘工法パイロット事業実績・予定

次に山口河川国道事務所の国道2号勝谷防災工事について発表します。

 

     路肩内施工

この現場はご覧のような、トンネル出口の両側の法面を受圧板アンカーで補強する工事でした。向かって右側の法面はすでに施工が完了いたしまして、左側の法面を施工している最中の写真です。この現場では無水掘工法の1.6mの足場幅で済むという利点を生かしまして路肩内にて施工が可能になり、車線規制なしで施工いたしました。

 

     NSLノンストップレーン工法比較表

従来工法の4.5m足場では

このように足場が走行車線にはみ出てしまいますので、片側通行規制をしなければなりません。

しかしながら、無水掘工法の1.6m足場では通行規制をかけずに施工しました。

これにより、片側通行規制による渋滞がなくなり、大きな社会的コストの低減が図れ、平成1596日本省にて、工事コスト800万、社会的コスト2,400万、総合的コスト3,200万と試算発表されています。

 

     CMPカンプリート工法

また、この現場では無水による圧密削孔には必ず発生する粉塵を口元で集塵して

自動搬送するCMPカンプリート工法と併用しました。これにより、国道沿いや民家の裏でも埃1つ、塵1つ出さずに施工できる併用工法なのです。

 

     無水掘工法パイロット事業実績・予定

現在パイロット事業施工予定として、今月下旬から和歌山の紀南河川国道事務所で42号見草地区法面補修工事を施工いたします。

その下のフィールド事業施工予定の現場は、三重県の紀勢国道事務所の42号海山鷲毛法面防災工事として、アンカー長が30mを越すアンカーを施工します。NETIS等にうたってあります無水掘工法の適応範囲に、削孔長は20mまで土質によっては30m程度まで可能とあるのですが、この現場は斜面がすでに動いており絶対水を使用したくないという発注者側の意向で、削孔長は適応範囲を超えているのですがフィールド事業として施工することとなりました。この現場の結果は追って発表をしたいと考えています。

その下のパイロット事業推進中の工事は、すでに土質等の検討資料にて無水掘工法の優位性が確認されている工事で、現在発注に向けて準備・検討していただいていると思います

 

     緑の斜面工法写真

補足になりますが、ご覧の現場は大阪府発注の現場です。

このように立木を残したままアンカー工を施工している現場です。従来工法ではなかなか立木を残すというのが難しかったのですが、

 

     緑の斜面工法施工状況

このように1.6m幅の足場のため立木を残したままで施工が可能となりました。

 

     検討範囲(削孔長・削孔径)

ここで、無水掘工法の検討範囲についてですが、

削孔径はΦ66mm〜126mmで土質によってはΦ136mmまで可能です。

削孔長は先ほども申しました通り、20mまでで、土質によっては30mまで可能となっています。

 

     検討範囲(適応土質)

次に適応土質ですが、

NETISにある様に山岳土木限定となります。

ただし、

ケーシングを使用して無水掘工法で施工することができ、それを二重管無水掘工法と呼んでいます。

 

     設計段階においての検討

設計段階における検討と致しまして、先ほどから申します通り、調査ボーリングの柱状図やコア写真等の資料より開発者を交えての検討をして、十分優位性を確認してからの採用としていたただいています。

 

     検討結果による優位性

次に優位性ですが、NETISより

品質の確保はもちろん

工事コストは34%縮減となり

工期は32%の短縮となります。

 

 

     まとめ                          

無水掘工法の活用効果として品質の確保安全性の向上総合的コストの縮減が挙げられます。品質の確保はパウダーコア採取による設置地盤の確認や被圧地下水の動向把握とそれに即対策することです。 安全性の向上は ワンマンリモートコントロールによる合図ミスによる事故防止や削孔水不使用による二次災害防止が挙げられます。総合的コスト縮減はNSLノンストップレーン工法の社会的コスト低減と緑の斜面工法のライフサイクルコスト低減、また足場幅減少による工事コストの縮減が達成されています。また、今後の課題として限界圧密削孔長を延ばすことや、自由長部の孔壁作成時間を短縮する事が挙げられます。これらの課題を達成する事によって さらに より良く・より安く・より多く 土砂災害を未然に防ぎ、国民の生命・財産を守り安心して暮らせる町づくりを目指していきたいと思います。