〜新行動指針に基づく「新行動計画」とは〜
 新行動計画では、単に工事コストの低減だけでなく、新技術の活用による工事期間の短縮などの「工事の時間的コストの低減」、耐久性の向上や省資源・省エネなどの「ライフサイクルコストの低減(施設の品質の向上)」、環境改善や安全対策などによる「工事における社会的コストの低減」についての取り組みを含めた総合的なコストの縮減を図っていくこととなっています。
 工事コストについては、実際に建設に要する費用をコスト縮減の取り組み(今後、”アクション”と呼びます。の前後で比較することにより算定することが可能です。しかし、施設の寿命期間中における費用の統計であるライフサイクルコストや環境改善、安全対策など元々お金の価値で表されていない社会的コストでは、統一された算定基準はなく、これまで算定されませんでした。
 今後、総合的なコスト縮減の効果をより的確に据えるため、これらライフサイクルコスト、社会的コスト、時間的コストの算定方法を、「公共工事コスト縮減の効果計測手法研究会」において検討中です。
                 (国土交通省 「公共工事コスト縮減効果の試算」 2002年9月5日発表より抜粋)


〜 新たなコスト縮減計画がスタート 〜
 平成9年度から3年間の計画でスタートした公共工事のコスト縮減の実績がまとまった。
 この縮減計画は、工事の計画・設計の見直し、工事発注の効率化などの直接的施策で6%以上、工事構成要素のコスト縮減、工事実施段階での合理化・規制緩和などの間接的施策によって4%以上の合わせて10%以上のコストを縮減するという内容であった。
 発表された縮減の実績を見ると、政府全体(各省庁、公団、事業団)では、取り組みを開始前の8年度に比べ9.6%、金額で7,600億円余りの縮減となった。また、建設省関係では9.8%の縮減率で、政府全体を上回ったものの、数字的には目標の10%には達しなかった。しかし、建設省は、間接的施策は効果の発現までに時間を要するとして、おおむね10%の目標は達成できたとしている。
 政府全体が一体となって初めて実施した公共工事のコスト縮減計画は、一応目標を達成し、成果を上げたわけだが、施策別に縮減率をみると直接的施策が7.6%、間接的施策が2.0%となっている。その中で最も縮減率の高いのは「設計方法の見直し」で3.2%次いで「技術開発の推進」1.3%、「積算の合理化」1.2%、「技術基準の見直し」0.9%、「計画手法の見直し」「建設副産物対策」0.7%となっている。
 こうしてみると公共工事の建設費を縮減するには、設計や積算の見直し、新しい技術の積極的な活用が重要であると
いうことだろう。

 また、「適正な発注ロットの設定」は0.2%の数値にとどまったが、この施策はどの程度の適正なロットで発注が取られたかによって判断されるべきであって、発注ロットの適正化がコスト縮減の効果が少ないということではあるまい。
 政府は8月下旬、この計画に続いて、新しい行動指針を策定した。新行動指針は、平成20年度までの9年間に実施する縮減方策を定めたものだが、前計画との大きな違いは、縮減の目標率を30%に設定したことと施設完成後の維持管理までを含めたライフサイクルコストや環境対策などの社会的コストにも対策を拡大した点にある。
 30%の目標率を設定したのは、政府が昨年4月に策定した「行政コスト削減に関する取り組み方針」の中で、11年度からの10年間に行政コストを30%削減することにしているところから、新行動指針もこれに準じたためである。この目標を達成するため、新指針では50施策で210項目の対策を実施するという。前計画が19施策、148項目の対策からなっていたので、実施項目が大幅に増えることになる。
 新たに実施するとしている対策は、時間的コストの低減を目指して事業箇所の集中化や新技術の活用等を推進する他ライフサイクルコスト低減のため施設の長寿命化や維持管理費の軽減の施策を講じる。また、社会的コストを低減する為リサイクルの推進や交通渋滞緩和対策等を行う。さらに、工事における規制緩和、工事情報の電子化等を通じて長期的コストの低減を図るとしている。
 公共工事は、不断に効率的施工の確保を心掛け、建設費をできる限り縮減を図ることが重要な課題である。このため、210項目にわたる諸施策の確実な実施が望まれるが、9年間に30%という高い目標率が設定されているので、数字あわせの単価削減などだけは避けるべきであろう。              (建設業界 2000年 10月号 「窓」より)