=========================================================================================================
  JOS INFORMATION SERVICES

                                  〜トピックス〜 VOL.5 02.9.13(金)
=========================================================================================================
            斜面安定とグランドアンカー工法の現状

 九州産業大学工学部土木工学科の奥園誠之教授の新聞記事(日刊建設工業新聞
2002/5/10掲載)を抜粋しながら、法面安定とグランドアンカー工法の現状について考えてみます。
(記事全文は添付ファイルをご覧下さい。ファイル容量の関係上、添付資料は圧縮しております。
解凍してご覧ください。)

1、 地すべり抑止とグランドアンカー
(前半省略)
 昭和40年代までは地すべり抑止工は杭工法が圧倒的に多かったが、50年代以降は仮設では
ない本設のアンカー工が多用されるようになってきた。その理由として次の2点が考えられる。
 (1)杭の破断例を見ると大半が曲げ強度の不足で折れている。
  その点、アンカーは曲げモーメントを考える必要がなく、高強度大口径の杭より安価である。
 (2)杭は平面的には綿状(チドリ配置を含む)に配置するため、その位置を間違うと杭の全面(下流
  側)が単独で地すべり崩壊を起こすことがある。その点アンカーは面的にカバーできるため部分崩
  壊が少ない。

2、 現場における問題点
 (前半省略)
 (1)完成して10年もたたないのにアンカーヘッド(頭部)が錆びて落下する。
 (2)テンドン(中間部の鋼線・鋼棒)が錆びて切断する。鋼棒は切断するとやり投げの槍のように全
  面に飛び出すことがあるので危険である。
 (3)定着部(一番奥の基盤に接着するところ)の耐力が設計どおりに保たれていないため、リフトオフ
  (引張り)試験をやってみると簡単に引抜ける。

 以上のうち(1)、(2)は、最近二重防蝕等の進歩によって改良されてきているが、以前のものはその
 まま放置されているのが現状である。
 (3)については定着基盤のクリープ(塑性変形)によるものもあるが、当初から定着長不足、つまり設
 計どおり施工されていなかった可能性があり、現場での品質管理のあり方が問われるものである。

3、緊張力は常時100%必要か
 アンカーは通常プレストレス(初期の緊張)を加えるが、時間とともに緊張力は低下していく宿命に
ある。この緊張力を常に設計荷重の100%に保持しておく必要があるか否かの議論がある。つまり、
再緊張、再再緊張である。
(中省略)
 アンカーも常に100%緊張させておく必要はないと考える。地すべり変形が起こればいやでも緊張
力は増加するのだから。しかし、先述(3)の品質管理を考えると、一度は100%緊張して、引抜き耐
力があるかどうかの確認はしておく必要がある。

4、引張り型と圧縮型
 アンカーの定着体の種類に引張り型と圧縮型がある。引張り型は、深部の基盤にテンドンをそのま
まモルタルで埋め込むため図―1のように上部から引張り荷重がかかる構造である。圧縮型は、ガイ
ドパイプの下から押し上げるため、図のAのように下から圧縮荷重がかかる構造になっている。
 (中省略)
 日本道路公団では、現場で実物大での比較実験が計画されており、その成果を期待しているとこ
ろである。

   

5、頼みの綱
 斜面安定のためのグランドアンカーは優れた工法と思っている。これに代わる工法は今のところ見当た
らない。しかし、決して安価な工法ではない。それだけに、設計どおりの製品が現場でできていない、
いわゆる手抜き工事は許せない心境であり、品質管理を徹底して欲しいと考えている。頼みの綱なの
だから。

以上が新聞記事抜粋によるものです。

近年優秀なグランドアンカー材料が数種類、工法として開発されています。
『材料+施工』により永久アンカーとしての品質が保証されます。
しかし施工における『現場品質管理』が非常に難しい為、上記記事のような指摘があります。
                 
 『無水掘工法 副題:ロックアンカー工、ロックボルト工における削孔システム』(『国土交通省-NETIS』
に詳細記載)で施工を行う事により、品質の向上、コスト縮減34%、工期短縮38%を実現し、一箇所
でも多く土砂災害を未然に防ぎ、安心して暮らせるまちづくりを目指しましょう。

【編集室より】
 『2、現場における問題点』で述べられている(3)については、当研究会の無水掘工法で行えば、定着
地盤の地質確認は100%であるため、定着長不足が発生する心配はないでしょう。
奥園教授が最後に述べられている「いわゆる手抜き工事は許せない心境であり、品質管理を徹底して
欲しいと考えている。頼みの綱なのだから。」という部分に頷きながら新聞記事を読み終えました。
 前号で手直し工事について取り上げましたが、現場の品質管理の向上が必要不可欠である事を再認
識する指摘記事であるように思います。

 次号は、『〜トピックス〜地すべり抑止工法の現状と展望』(仮称)「ベース設計資料2002年9月20日
発刊版掲載 九州産業大学工学部土木工学科の奥園誠之教授の記事について」を予定しております。